備中川面寺山城跡・調査の結果
調査の結果  

(1) 全体の構成

  寺山城は、川面 の町の背後にそびえる標高約310mの山頂にあり、南側を通る国道180号から見てもひときわ目立つ存在である。主に3つの峰からなり、その頂部を中心に 多数の郭が築成されている。この三峰に展開する郭群は、西から順に「西の丸」、「本丸」、「東の丸」と呼ばれている。また、「東の丸」からさらに南東に派 生する尾根上にも郭の配列が認められ、「馬場」と呼ばれている。郭群の広がりは、「西の丸」西端から「馬場」東端まで、およそ650mを測る。また、今回 の調査対象外であるが、谷を挟んで北側の丘陵にも平坦面等、人工的な地形の改革が認められ、城域はさらに広がるようである。『備中川面古城』絵図(後述) では、「東の丸」の北にも独立した小規模な郭が描かれており、これと関連する可能性がある。


(2)「本丸」
  寺山城の中央最 高所(標高約310m)を中心とする郭群は「本丸」と呼ばれている。最高所にある主郭はおよそ東西40m、南北10mの規模で、ほぼ平坦である。主郭の北 西端部には、下段に降りるための土橋状の斜路が設けられている。主郭の周囲には数段にわたつて腰郭、帯郭がめぐらされるが、北側の帯郭などは郭面が平坦で なく北へ向かって傾斜している。さらに、南東と南西にのびる二筋の尾根上には、階段状に小規模な郭が連なっている。南東尾根には5郭、南西尾根には9郭が 認められる。また、「東の丸」へ向かう尾根上には東西長約45mの長い郭があり、その東端は深い堀切によって切断されている。なお、この堀切部分」から北 へ向けて、長さ40mの土塁が続いている。東西から谷筋が入る場所であり、谷頭のやせ尾根を利用して土塁に加工したものである。その北端は道路によって破 壊されているが、本来は北側の丘陵に接続していただろう。あるいはこの道路部分に堀切があって、城門を兼ねていた可能性もある。この土塁の西側には郭が1 か所伴っている。


(3)「東の丸」
  本丸の東側にあ る郭群は「東の丸」と呼ばれている。最高所の主郭はおよそ東西22m、南北37mと広く、ほぼ平坦である。そこから南西にのびる尾根線上には4段の郭ご階 段状に配される。また東斜面には腰郭、帯郭がめぐらされるが、長さ90mに及ぶ長大な帯郭は北から南に向かってかなり傾斜しており、道の機能を兼ね備えて いたであろう。また、この帯郭の北端には、矢穴をもつ石材が地表に露出している。「東の丸」の郭群は、傾斜の急な尾根線上に比較的広い面積の郭を配置して おり、その結果、郭相互の高低差が大きく、「本丸」や「西の丸」に比べると大規模な地形の改変を行っているように見受けられる。


(4)「本丸」−「東の丸」間
 
  「本丸」と「東 の丸」は、東西方向の幅狭い尾根で繋がっている。その両端、すなわち「本丸」及び「東の丸」との接続部には深い堀切を設けている。断面「V」字形の薬研掘 である。「本丸」側の堀切は南斜面まで続き、つづら折れの道となって山麓の吉祥寺付近に通じている。この幅狭い尾根の頂部には明確な郭が認められないが、 東半部においては、主に南斜面を削ることによって土塁状に整形され、尾根線頂部の幅をさらに狭めている。また、西半部の南斜面には、幅2〜3m、長さ 40m に及ぶ竪堀1条と、横堀2条が認められる。いずれも箱堀であるため底面の幅は比較的広い。横堀は道としても使われており、上述の堀切から山を降る道と合流 している。


(5)「馬場」
  「東の丸」から 派生し南東にのびる尾根上に築かれた郭群は、古くから「馬場」と呼ばれてきたようである。尾根の先端付近に築かれた主郭は長さ(北西-南東方向)約 30m、幅約」12mの規模で、そこから「東の丸」に向けて6郭が整然と配され、「東の丸」との間には1条の小規模な堀切を堀削している。主郭から数えて 北西へ4郭目は尾根の鞍部で最も低い位置になり、南西端部には谷筋へ下りていく道が接続している。
5郭目の東端には、東へ開口する横穴遺構が認められる。現存幅約1m、奥行約1.5mで、花崗岩の岩盤を穿って横穴を作っている。内部は半ば埋没し、東側 は崩落している可能性があるため本来の姿が明らかでないが、勝田郡勝央町茂平城跡や津山市加茂町百々などで確認されているような貯蔵遺構(穴蔵)の可能性 がある。また、6郭目の北側には道が接続しており、丘陵の北側を等高線に沿って西進し、「本丸」東側の堀切北側へ通ずる。


(6)「西の丸」
  本丸から大規模 な堀切」を隔てて西側は「西の丸」と呼ばれている。最高所の主郭は東西約15m、南北約20mと小規模だが、西側にそれほど大きな段差を設けず2郭が連 なっている。「本丸」側の堀切に向かっては、2段の腰郭と東西約30mの細長い郭を尾根線上に配している。主郭から南にのびる尾根線上には、階段上に2郭 を配し、南側に堀切を設けて切断している。北〜北西斜面には帯郭が顕著で、かなりの高低差をもって3段の帯郭が設けられている。そこから西にのびる尾根上 にも小規模な郭があり、また北西方面の谷筋には竪堀の可能性のあるくぼみが見られる。